国民の睡眠面からの予防医学研究で「日本医師会医学賞」を受賞(順天堂大学 公衆衛生学 谷川 武 氏)

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順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学主任教授の谷川武氏が2023年度「日本医師会医学賞」を受賞した。「国民の健康・安全に資する睡眠面からの予防医学研究の推進」をテーマに長年取り組んできた研究成果が評価された。11月1日に日本医師会の医学大会で表彰式が行われた。

同氏は睡眠の質の低下につながる睡眠時無呼吸症候群の重症度を測る指標としてパルスオキシメトル法(指先に光を当て、血中酸素飽和度を測定する方法)を世界に先駆けて導入し、飲酒や顔面骨格、肥満等と睡眠障害の悪化との関連性をつきとめた。さらに睡眠障害がメタボリックシンドロームや糖尿病発症に及ぼす影響を見出し、約20年間の長期の追跡研究から、睡眠障害が心疾患やラクナ梗塞(脳の深くにできる小さな脳梗塞)の発症リスクを上昇させることなども明らかにした。

また仕事や職場における安全リスクの観点からは、交通事故防止を目的に職業運転手を対象としたフローセンサ法(鼻及び口の先につけたセンサにより睡眠中の無呼吸や低呼吸を把握する検査)による検査をスタートさせ、現在ではパルスオキシメトリ法、フローセンサ法合わせて年間約10万人が受検するまでに普及している。加えて、長時間労働の医師の健康確保措置マニュアル(厚生労働省)の作成や、東日本大震災後の福島原子力発電所所員のストレス緩和を目指した産業保健活動にも従事した。

同氏は「全国の医療機関・検診機関において、成人・小児のスクリーニング※ならびに睡眠負債の客観的スクリーニング※が推進されることで、国民の安全向上・健康増進の両面に寄与できると確信している」とし、睡眠と安全・健康に関する研究への引き続きの支援を呼びかけた。

※スクリーニング 無症状の者に検査を実施し、病気の早期発見、早期治療を図ることでその疾患の予後を改善させること。

「DIET&BEAUTY新春号」(1月末発行号にて、関連記事を掲載予定です)

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