女性が輝く、21世紀の湯治場づくり② ウェルネス公共事業、地域の女性と市が連携し運営へ

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今年3月に大分県豊後高田市の北部長崎鼻ビーチリゾートにおいて、「海風タラソテラピー」(一般社団法人日仏温泉・タラソテラピー・文化振興会SPALOHAS俱楽部監修)が完成した。持続可能な「住む人も来る人も健康になる」仕組みを構築し、生活習慣病予防三大原則である「食・運動・リラクゼーション」と組合せた「夏プラン」などを提供。事業に参加し支えてきた地域の女性達が、市と連携を図りながら「花の岬」として自主的に運営している。事業終了後、半年が経過した今、担当する豊後高田市役所商工観光課長河野真一氏に話を聞いた。

地域の資源を活用したウェルネス・ファームづくりについて

豊後高田市商工観光課長 河野真一氏

―長崎鼻ビーチリゾートは小さく囲われた美しい人口のビーチです。今までのキャンプ場やビーチの設備は老朽化が目立ちましたが、今回は、単にキャンプ場やBBQ設備の改善に留まらず、少子高齢化や過疎化が国内で進むことを視野に入れ、「健康と癒しを取り入れた滞在型保養リゾート」としてソフト面が強化されました。コロナ禍のハイシーズンを経験した今のご意見をお教えください。

河野氏 本市では夏休み期間だけのキャンプ場・海水浴場として利用されてきた長崎鼻キャンプ場を「健康と癒しの滞在型保養リゾート」へと転換するべく、その手法を検討しました。

リゾートといえば、「IR」に代表されるように大規模投資がイメージされますが、小規模な本市では不可能な話です。そこで、保養リゾートの先進地フランスのタラソテラピーのノウハウを持つ「SPALOHAS倶楽部」、及び東海大学の全面的なご協力をいただき、長崎鼻の「自然環境」、「有機栽培のヒマワリオイル」、健康食品の「ボタンボウフウ(長命草)」などの天然資源とヨガやリラクゼーション施術者の育成を組み合わせた手法による保養リゾートを目指しました。

大規模な施設がないので固定経費も低く抑えられ持続可能な保養リゾートが実現できて、関係者の皆さんに感謝しています。

―事業に参加された地域の女性達が「花の岬」として自主的に営業や運営を開始されていますが、市と地元の方々との連携についてご意見をお聞かせください。

河野氏 どのような事業でも事業運営の核となるのが「人」の確保ですが、本市も全国の過疎地域と同じく、少子高齢化の進展に伴う人手不足が顕著で、全ての分野において喫緊の課題となっています。

長崎鼻での保養リゾートづくりにおいてもヨガやリラクゼーションの施術者確保が課題でありましたが、外から人をつれて来るのではなく、地元にいる人材を育成するという「SPALOHAS俱楽部」のご指導のもと、3年掛かりで人材の募集と育成に取り組みました。

その結果、市内を中心に10人を超える施術者が育成され、自立した運営体制に移行できたことは、今後の地方における事業モデルになりうると思っています。

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お話を伺い、「人生100年時代」少子高齢化や過疎化による様々な問題があるなか、これからの町づくりは、小規模でも地域住民の希望や市場のニーズを見極めて、その土地に適したウェルネスなサービスを住民と共に構築できる市の柔軟性が成功の鍵と思えた。

長崎鼻ビーチリゾート「花の岬」は、基本的に週末のみの運営となっているが*、今回好評だったことから今年3月に試験的に実施した「冬プラン」も、4か月前倒しして11月の開始を検討している。 *BBQやトレーラーハウス、ログハウス等は週末に限らず運営。

画像協力:豊後高田市、「花の岬」

※地方創生推進交付金(内閣府)を活用。持続可能な「住む人も来る人も健康になる」仕組みづくりと事業に参加した地域女性達による独立運営を目指し、人材育成と地域の自然や特産、資源を最大限活用した「ウェルネスツーリズム」を構築。5年間事業総額約1,350万円(2016~18年度、同高度化事業2019~20年度)。

(一社)日仏温泉・タラソテラピー・文化振興会SPALOHAS俱楽部
「世界温泉サミット」健康・美容分科会招聘2018、フランスタラソテラピー組合長Dr.ペレーズシスカールとSPA&Wellness講演2020、フランス温泉療法名誉賞受賞2014、日本温泉地域学会会員、他。

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