“本草学”発祥の地に伝統と最新技術融合の薬草湯オープン

企業戦略

周囲を山々に囲まれた三重県中部の多気郡多気町。山林を活用した多様性と専門性を兼ね備えた大型商業施設「VISON」が昨年 7 月にグランドオープンした。敷地面積は東京ドーム 24 個分(敷地面積 35 万坪)にも及ぶ。

水鏡の湯(外湯)

同施設南部に位置する本草エリアに、三重大学とロート製薬㈱が連携して開発したのが「本草湯」だ。多気町は野呂元丈をはじめとする “本草学” の先駆者を多く輩出することから発祥の地とも呼ばれる。“本草学” を現代的な解釈で生活に活かすことをコンセプトに、施設や周辺に植生する薬草を活用。伝統と最新の科学や技術を融合したウエルネススポットとして誕生した。

開発に携わったロート製薬は「薬に頼らない製薬会社」をスローガンに掲げ、人にもとから備わる病気の予防や自ら回復しようとする力に着目する。それを引き出すのが自然の力だという。新鮮な食材を食べること、風呂で温まること、森林など空気の綺麗な場所で過ごすこと、そして先人の知恵や地域の伝統の中にあると考え、多気町にはその全てが詰まっていると話す。
今回「本草湯」のコンセプトづくりに携わったロート製薬経営企画部の相馬明弘氏は「多気の丹生(にゅう)と呼ばれる地域には、土地にあわせた季節の事象や注意事項を記した独特の暦、“丹生暦” というものがある。これを活かして開発したのが本草湯だ」と語る。薬湯は暦にあわせて地域と季節を象徴する素材を組み合わせた七十二候分(72 種類)を用意。素材は地域特産の生薬や、一般的にはあまり注目を集めないような植物も活用する。露天風呂では自然との融合を目指し、季節の風景や香り、月や星座の位置といった環境も組み入れ、五感すべてに訴えかける。
コロナ禍でのオープンとなったが、昨秋、緊急事態宣言が空けて以降、徐々に東海エリアや関西エリアなど県内外から訪れる人が増えているという。オープンから約半年で利用者は10万人を超えた。「これからはシチュエーションやプレイス、そうしたものが重要になるのではないかと考えている」と相馬氏は話す。
VISONは同県菰野町に癒しと食をテーマにした総合リゾート「アクアイグニス」を運営する㈱アクアイグニスが中心となり、イオンタウン㈱、ファーストブラザーズ㈱、ロート製薬㈱の4社合同で、『三重故郷創生プロジェクト』として 13 年にスタートした。本草湯の他、日本最大級の産直市場やスペイン・サンセバスチャン市で人気のバルが並ぶ通り、ホテルヴィラ・旅籠といった宿泊施設を備える。また日本の伝統継承をコンセプトに味噌や醤油、酢といった発酵食品に関する店舗が並ぶ。近隣の町と連携したスーパーシティ構想も目指す。
アクアイグニス代表取締役の立花哲也氏は今後について「ロート製薬と美と健康に関連するツアーを検討している。最終的には長期滞在できるプログラムを構築していきたい」と話している。

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