経済を再開した米国の外食やサービスを中心としたホスピタリティ業界では、空前の人手不足が起きています。
7月初めの連休はラスベガス、ハワイなどの観光地で ”リベンジ・バケーション(昨年の休暇をあきらめた人々が腹いせに思い切って休暇を楽しむこと)” で人が殺到しました。特にハワイは、7月3~5日の3日間で17万人以上が訪れ、空港がさほど大きくないマウイのカフルイ空港は、空港全体がボトルネックで「容量超過」に見舞われました。状況は街の中も同様で、夏休み期間中は航空会社に減便するように要請が出ました。
人手不足の理由はパンデミックが長く続き過ぎた為に、これらの業種についていた人々が職を離れて別の業態へ転職したからです。直近のビジネスニュースでは業界で従事していた人々の3割が、時給や給料のアップ、医療保険や有給休暇などの福利厚生の更なる充実、そして新型コロナウイルスが完全に終息するまでの感染対策が管理された職場環境の保証等が無けれは、同じ職場へ戻りたくないと答えているそうです。
またパンデミック渦に政府が行った企業救済対策で、従業員を確保するために給料の一部を政府が立て替えて支払う返金無用のプログラムを多くの企業や経営者が受けています。したがって当分の間、雇いすぎたからすぐ解雇するというわけにはいかないのです。デルタ変異株の感染問題も浮上してきている中で、容易に過剰な人員は増やせません。
専門用語で、十分なサービスを提供できずに顧客が離れてしまって売り上げに繋がらない結果を指して ”Opportunity Loss (機会の損失)“ と言います。先月末に発表された統計では、2021年度後半にかけて業界の84%が人手不足であると感じ、そこから生じるOpportunity Lossを避けるために『いかに人手不足を乗り切るか?』と言うのがポストコロナに向けた課題の1つとなっています。
人員を減らす対策として、ホスピタリティ業界では人間の代わりにテクノロジーの導入も盛んになっておりますが、中にはそれらが苦手という顧客もいます。仮にそうした人々を特定することが出来れば、一定地域だけを有人にするなどの配備も可能となります。したがって最近では写真(左記)のような1~4の四段階形式の質問アンケートをアプリや電子メールを通して顧客の声をデータ化した対策も登場しています。店舗で施術者がワクチン接種の証明を提示するなどの動きも今後予想されます。
五十嵐 ゆう子 Yuko Igarashi
流通ヘルス&ビューティコンサルタント
米国在住の流通専門家。グロサリー業、ドラッグストアを始めとする小売流通全体のコンサルティング&通訳を兼ねるスペシャリストとして活躍。また児童教育や美容・健康産業にも精通し、「DIET&BEAUTY」でコラム(米国の健康・美容最新事情)を15年近く掲載中。その他に日本生協連合会生活資料、イズミヤ総研などの執筆を手掛けている。米国の流通ニュースも毎週アップしております。ご興味のある方は以下のサイトをクリック下さい。
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