女性が輝く、21世紀の湯治場づくり③ ソフト面の充実も評価 関連事業で国交省・内閣府より豊後高田市W受賞

業界動向

(画像:国土交通省による豊後高田市、佐々木敏夫市長を「地域づくり表彰審査会特別賞」で表彰)

2回にわたりご紹介してきた「海風タラソテラピー」関連事業で、大分県豊後高田市が国土交通省「2021年度地域づくり表彰 審査会特別賞」(昨年10月)、内閣府 恋人の聖地第2回地域活性化大賞「観光庁長官賞」(昨年11月)をWで受賞した。

ハード面で長崎鼻ビーチに建てられた全天候型テラスが10月に「グッドデザイン賞」を受賞しており、今年度、豊後高田市は長崎鼻関連事業でトリプル受賞の栄誉に輝いた。

国土交通省に表彰された「パーフェクトビーチ・里海ヘルスツーリズム」事業は、東海大学海洋学部斉藤雅樹教授のコンセプト、「安全・清潔・快適」な「パーフェクトビーチ」づくりを基に、花の時期と長年キャンプ場として夏の1ヵ月のみ賑わっていた長崎鼻ビーチ周辺の安全面や老朽化した建物をトレーラーハウスやグランピングへバージョンアップして通年の運営を図ったもの。

「海風タラソテラピー」は、本事業の核となるヘルスツーリズム、いわゆる日本が弱いとされてきた「ソフト面」の充実を目指して、フランスのヘルスツーリズムの拠点である温泉やタラソテラピー関係者と長年交流を続けている(一社)日仏温泉・タラソテラピー・文化振興会SPALOHAS俱楽部が監修を担った。タラソテラピーのノウハウと「生活習慣病予防三大原則:健康的な食事、適度な運動、リラクゼーション」の三位一体のサービスを構築して、同じ場所で提供することを目指した。

国東半島の素晴らしい歴史・文化に加えて、美しいリアス式海岸線や干潟に沈む夕陽、日本のスーパーフード「長命草」とミネラルを豊富に含む「落花生」などが特産品で、化学合成品を一切介さず搾ったオレイン酸やビタミンが豊富な「ひまわりオイル」など、元々素晴らしい素材が揃っていた。わざわざ費用と時間を掛けて、当初希望のあった「ひまわりオイル」から「ご当地コスメ」を作ることは避け、それぞれに素晴らしい要素を融合し、来る人にも住む人にも「健康への気付き」を喚起させ、同時に少子高齢化や過疎化問題と温泉地の取り組みの関係などを地域の人達に根気よく説明するなど、人材育成を強化した。

其々健康的な要素を取り込んだ商品を「夏プラン」「冬プラン」として完成させて、昨年3月「海風タラソテラピー」事業は終了した(「パーフェクトビーチ・里海ヘルスツーリズム」事業は今年度で終了)。

事業終了後は、事業を支えてきた地域の女性約13人で任意団体「花の岬」を結成し、市と連携を図りながら「夏・冬プラン」などの運営に携わり、旅行社や企業へ営業もはじめて、コロナ禍を考慮しながら適度に集客できて、既に今年の「夏プラン」の問い合わせもあるという。

体験されたお客様からは「すごくリラックスできた!」「こんなに笑ったのは何年ぶり!」など好評とのこと。売上も100%「花の岬」へ入り(ランチのみ3%水道光熱費として協議会へ)、微力ながら地域経済に貢献できているようだ。

満足された医療関係のお客様から出張レッスンの話が出たり、市の新成人向けの体験に選ばれたり、市の健康づくり事業へ呼ばれたり、MATAMAサンセット・ヨガ(日本の夕陽100選の真玉海岸の干潟に夕陽が沈む特別な日のみ開催)を見た他のヨガ団体から実施したいと要望がきたりと大きく展開し始めている。

昨年12月3日には国土交通省による「2021年度地域づくり表彰で審査会特別賞」の授与式が、豊後高田市役所で行われて「パーフェクトビーチ・里海ヘルスツーリズム推進協議会」会長を務める佐々木敏夫市長に表彰状が手渡された。

主な選択理由は次のとおり(国土交通省関連HPより):女性の嗜好に着目し、九州最大級の花公園長崎鼻のリゾートキャンプ場を核に「安全・清潔・快適」な海水浴場の整備、海洋療法と温泉療法の導入、ひまわりや長命草による商品開発により、海、温泉、健康食などの小規模ながら恵まれた地域資源を新たな視点で統合し魅力的な場所へと変貌させ、市全体の観光振興を促進させるなど、地域の活性化に功績があり高い評価を受けた」。

授賞式に参加した方々によると、「絶景や特産など特別なものは他の多くの地域にもあるが、それらを上手く融合するのが難しい。今回、市内のそれぞれ特別なものを(楽器に例えたりされ)オーケストラを奏でるようなストーリーを感じられるものにした。他で同じことをどのようにすればできるか?どういった視点で誰が構築したのか?」など興味を示されていたとのこと。

昨年4月から運営を担っている「花の岬」メンバーに現在の気持ちを伺った。

  • 「時間を掛けて丁寧に作り上げ間違いのない本物であることの重要さを実感しています。若者だけがターゲットなら、単にグランピングなどで集客できるかもしれませんが、健康に興味のある、あらゆる年代には本物でないと受け入れてもらえず事業の理念は伝わらないと思います」。
  • 「分からない人に言っても仕方ないですが、本物+健康思考が体験者に気づきを与え、それが良い連鎖になればという思いで活動しています」。
  • 「地元に宝の風景があり、普通の主婦が集まり*、それらを活かす知恵を絞り活動するのは大変ですが、やりがいがあり、楽しみながら健康維持出来るのは幸せなことです」。(*実際は、様々な講師や調理師、自社勤務など、自立心旺盛な地元の主婦や女性の集まり)
  • 「自然のなかで楽しく身体を動かし、健康的な食事をとり、リラクゼーションを受ける。施術だけ、SUPやBBQ、SUPヨガだけ、ヘルシーランチだけの提供では、普通のリゾートで終わり、ここまでならなかったと思います」。
  • 「自分が生まれ育った地域で、何もなかったビーチが健康的なイメージに繋がるのは嬉しいのですが、コロナで市外からの集客は地元の方々が不安になるため自粛気味。自分もコロナで別の仕事も始めて、思うように参加できないのが残念です」。
  • 「重責を担い、企業や旅行社へ営業をしています。1万円程度ならと参加いただけるところが多く、適切な金額設定と思います」。

他の意見では、「同じ空間を協議会や夏場だけ使用する漁協などと共有する為、工事や貸し切り利用の日程などを確実に全員で共有し、施術者のスケジュール管理が上手くできないと、折角営業しても逆効果で進められない」、「野菜など地元産の安価で良質なものがあり、全て地元産で揃えたい」等々。勿論、どの事業でも継続的な努力が求められ、頼もしい具体的な意見と、解決すべき課題、今後の希望などが寄せられた。

誰でも昨日まで慣れ親しんできたキャンプやBBQならすぐに理解できる。ヘルスツーリズムのソフトの構築は、既に長い間、欧米だけでなく、アジア・パシフィックの近隣諸国を含む世界中で推進されている。急激な少子高齢化が進む日本は、海に囲まれ温泉も豊富で「健康資源」に恵まれているが、残念ながら「箱物公共事業」と指摘されてきたのは周知の事実でもあり、「ソフト面」の開発が低コストで大きなメリットを生み、地域経済にも微力ながら貢献できることを実証し、その点も評価を得た。

ポスト・コロナに向けて、ヘルスツーリズムのソフト面への理解が深まり、長崎鼻から他の地域に広がるよう、現地のソフト面の更なる展開に期待したい。

(画像協力:豊後高田市、「花の岬」)

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(一社)日仏温泉・タラソテラピー・文化振興会SPALOHAS俱楽部

温泉や海を拠点としたヘルスツーリズム構築コンサルタント、ウェルネスな日仏旅・視察サポート、日本の温泉文化を主にフランスへ発信等。フランスのヘルスツーリズム拠点、温泉やタラソテラピーの体験取材を重ね、フランスの理念を日本型に変換。大分県「長崎鼻パーフェクトビーチプロジェクト」の核「海風タラソテラピー」を監修し、プロジェクトが国のW受賞を果たす(記事ご参照)。

Instagram spalohasclub、 HP: www.spalohas.com

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