「にぎたえしるく」でまち守り

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(写真)繭は、水と光だけでタンパク質を生み出す天然繊維。様々な活用方法が期待される。

地域の美と健康が動き出した【第77回】(愛知県)

人口約2,000人の稲武(いなぶ)地域(現愛知県豊田市)。この地域で生産される「稲武シルク」は、皇室や伊勢神宮、熱田神宮の祭祀に用いられ、まさに日本のトップブランドといえる。実際、稲武シルクは明治15(1882)年から毎年、伊勢神宮の神御衣祭(かんみそさい)に奉られる和妙(にぎたえ=絹織物のこと。)の原料となる生糸として献納されてきたが、国内養蚕業の苦境や少子高齢化の進行により、伝統文化の継承が危ぶまれている。そこで、稲武で持続可能な地域社会の実現のために活動している一般財団法人古橋会は、新ブランド「貴いシルク」を立ち上げ、稲武シルクを守り伝える取り組みを展開している。

「にぎたえしるく湯 ゆずの香り」 今後は、四季に合わせた香りの発売を予定している。

古橋会の常務理事である古橋真人氏は、稲武シルクをもっと多くの方に知ってもらい、稲武地域・稲武シルクの文化を活性化したいという想いから、第一歩として「にぎたえしるく湯」を商品化した。稲武シルクの保湿成分を配合した入浴剤は優しいゆずの香りで、一日の疲れを癒してくれる。真人氏が次の展開を見据えて動き出したところ、地域商社みかわの青山社長と出会い、取り組みが加速した。

地域商社みかわは、豊川信用金庫100%出資により設立された、中部地方で初の信金による地域商社。三河地域の魅力を発信することを目的に、様々な販路開拓サポートを行っている。青山社長自身も豊川信金の職員であるが、「金融機関職員とは違った目線で事業者と携わり、地域の魅力を発信できる」と語る。真人氏の「地域を盛り上げたい」という想いに賛同し、地域に根差した金融機関だからこそ持ち得るネットワークを活かして、稲武シルクのPRに一役買っている。

(写真)古橋真人氏。まちの伝統文化を守るためにも、未来を見据えて新しいチャレンジを続ける。

真人氏が掲げているのは「まち守り」。「この地域にあるもの」を守るために、新しい発想でチャレンジする。実はシルクは、和服以外にもヘルスケアやシルクフードなど様々な用途が期待されており、古橋会としてもシルクの活用事例研究に余念がない。地域に脈々と受け継がれてきた伝統文化を守り、地域に愛される取り組みを。広く深く描かれた真人氏の夢は、まず、地域に根差すことから始まる。

 

中小機構中部本部 主任 中国 由理亜

地域・連携支援課で中小・小規模事業者の事業継続力強化や事業承継の円滑化支援、地域支援機関との連携強化に携わる。

 

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